マイラブ豊かな人生

思い出探しと日々雑感

カレーとシチュー

昨年、ふとした不注意から転倒して大腿骨頸部骨折をしてしまいました。

初めて救急車に乗りましたが、あまりの痛さにずっと痙攣していました。

レントゲンの結果、大腿骨頸部が包丁で大根をすっぱり

切ったように真っ二つに分離していて、こんなにきれいに

骨折するものなの?と思いました。

手術したらすぐにリハビリが始まりましたが、

新型コロナウィルス感染がなんとなく騒がれ始めてからまもなく、

志村けんさんがコロナで亡くなったとの報道があり、

とってもショックでした。

家族の面会も禁止になり、エレベーターに乗って他の階に

行くことも売店に行くことも禁止になり、楽しみは何もありません。

毎日のコロナ感染者数が気になる不安な日々が続いていました。

入院して2週間で病室が変わることになりました。

2人部屋でお隣さんは80歳の方でしたが、とても若々しくて

聡明な方でしたので毎日いろいろなことを教えていただきました。

病院の食事はメニューの中から選べるようになっていて、

病院食とは思えないほど美味しかったのです。

お隣さんは、「私はカレーが大好きなのに一回も出ないのよ」と

言うのを何回も聞いていました。

私は病室が変わる前に2回カレーを食べていましたので、

「おかしいなぁ・・・」といつも思っていたのですが。。。

高齢者の食事は少し違っているので・・・とのことでした。

ある日の夕食、病室が変わってから初めてカレーが出ました。

お隣さんはカレーの匂いに敏感に反応して、

「あなた、もしかしてカレーなの?」と聞いて来ました。

私が、「そちらは何ですか?」と聞き返すと、

「シチューなのよ、カレーでいいなぁ」と寂しそうです。

「本当はいけないことだけど、内緒で取り換えてあげましょうか?」

「えっ、いいの?嬉しい。でもあなたシチューでいいの?」

「いいですよ。私シチュー大好きなんです」

「わぁ~うれしい~、ありがとう」

こんな会話でカレーとシチューは取り換えっこになりました。

食後は証拠隠滅のため、食器はお互いの元に返還しました。

今でも1~2か月に一度どちらかともなく電話で連絡を

取り合っていますが、必ず「カレーとシチューの交換」の

話で盛り上がっています。

お互い2カ月ちょっとの入院生活でしたが、痛さにも

リハビリの厳しさにもめげず、毎日笑いながら過ごせたので

歳の差を超えて楽しい入院生活を送れたことが良き思い出です。